森の宿の物語 > 12話:窓

お話の続き。


だんだん空が染まってきたなぁ。

珈琲を半分ほど飲んだ頃、
ふと気付く。

なんだあの窓…
〝絵画みたいだ。〟


そう、このスクエアの窓こそ
少し引いた所からぜひ見ていただきたいのです。

まるで写真のような、絵画のような
そんな景色がこの窓の向こうに広がっています。

写真は、風のへやです。

風のへやは、山側にありますので
連なる山々を見ていただけます。
夕方になるとだんだんこちらの空が染まっていきます。

一方で月のへやは、この窓からは
山々の景色は見えませんが、
太陽と逆の方にあるため、
下から見ると青い空を眺めていただけます。

風のへやから見える山々には
お昼過ぎから太陽があるので
どうしても逆光で白く霞がかってしまうのです。

山々を見るか、
より青い空を見るか。

もちろん天気や季節、時間帯によって
この窓から見える景色が違うので
その移り変わりを楽しんでいただけます。

本当動く絵画のようで、
「あの窓の眺めはずっと見ていられる」と
お客様からもよくお声をかけて頂きます。


おっと…
もうこんな時間。

せっかくだし、
閉まる前に雑貨屋さんにでも行こうかなぁ。


残りの珈琲を飲んで、
手ぶらで、外へ出る。

荷物を持たずに外へ出て
いつでもお部屋に戻ることができる。

これが宿に泊まる人の特権。

何故だかチェックインのあと
手ぶらで外へ出る瞬間ってワクワクするもんだ。


徒歩30秒。

「山の上の雑貨店」に到着。

カランカラン..

続きは次回。