森の宿の物語 > 21話:笑顔になる朝ごはん

お話の続き。

実は、この物語を含めて残り2話なのです。

朝は早起きしても
あっと言う間に時間が過ぎると
そうよくお声をいただきます。

そのあっという間、もう終わり?
という感覚を表現するために、

敢えて最も最高な時間の「朝」を
2話にまとめることにしました。

ぜひ、この時間は
実際に味わっていただきたいものです。




んんっ…

ん。
ん?もう朝か…

何かは思い出せないが、
心地いい夢をみた。

カーテンから漏れる光と
鳥の声で目が覚めた。

まだ、6時過ぎか…

アラームをかけずに目を覚ましたのは
いつぶりだろうか。

いつもと同じぐらいしか寝ていないのに
すごくすっきりしていて、よく寝た気がする。

皆さんから、光と鳥の声で目が覚めた、
それがすごく気持ちよかったと
よくお声をいただきます。

本来誰もがアラームなしで起きられるはず。

ここで体内時計のリセットをする
そんな朝を迎えていただければ嬉しいです。


大きく伸びをして、
窓を開けて深呼吸。

朝の森の香りがする。

空気が美味しい。


カチッ…お湯が沸いた。

いい香りと共に湯気が空に上がっていく。

朝焼けする山あいの景色を眺めながらの
コーヒーは至福のひとときだ。

チェックアウト前に雑貨店へ行って
チェックアウト後に焼き菓子を買おう
それから…

〝コンコンコン〟

え!?

もう!?

昨日、チェックインの時に
「8:30になりましたらお部屋の前に
バスケットにお入れした朝食をご用意します。
3回ノックを致しますので、
それが朝ごはんの合図です。」と聞いていた。

扉を開けると、椅子の上にバスケットが。

あまりに心地が良くて
あっという間に時間が過ぎていたのだ。

それよりも…
これは、かわいすぎる…


そう、朝食はお部屋の前にご用意を致します。

これは、朝、直接スタッフと
顔を合わさないようにするためです。

出発するその最後の時間まで
寝間着でゆっくりしたり
お化粧をしないでのんびり過ごしたりと
特別な時間を味わっていただきたく
このようなスタイルでご用意をしております。

もちろん、この朝食を
外の小屋、「日々ここにある風景」で
お召し上がりいただいてもOKです!


寝間着姿のまま、ワクワクしながら
バスケットの中から一つずつを取り出していく。

わっぱのお弁当箱に、
おにぎり用の竹かご、
お味噌汁を注いで、
枇杷茶を入れて…

それぞれ蓋をあけたり、注ぐごとに
漂う香りがたまらなくて
思わずお腹が鳴った。


敢えて、こうしてバスケットの中に
幾つもに分けてお入れしているのは、

一つずつあけるワクワク感を
楽しんでいただきたいからなのです。

「食べる」というその時間そのものを
味わっていただきたいのです。

〝ごはんと一緒に笑顔をお届けできたら〟
なんて思いながらノックをしているのです。


この時間のことは、
もうこれ以上は、語りません。

この時間は、言葉で表現しきれないし、
もしこの朝ごはんだけをご用意したとしても
この感覚は感じられないものなのです。

空の移り変わりを見て、一晩を過ごして、
朝を迎えて、そして朝ごはんを食べて、
この全ての時間を過ごした方にしか
感じられない心地なのです。


あ〜お腹いっぱい〜

心もお腹もいっぱい..
これが本当の満腹か…

そんなことを考えながら
スクエアの窓から空を眺める。


最終話へ続く。